タイル業界で今流行っている外壁タイルの接着剤張りの良さ

「外壁タイルを接着剤で張りつけるメリットって何?」

「接着剤張りと一般的なタイル張りの工法の違いは?」

最新の接着剤張り情報を、タイル工事店に勤めている私が皆さんにお伝えします!

外壁タイルの接着剤張りのメリットデメリットや、条件付きで発生するメリットを受けるための方法を解説します。

この記事を読めば、外壁タイルの接着剤張りの良さが分かります。
日本の建設業界では接着剤張りがスタンダードになりつつありますが、その理由もお分かりいただけます。

私もはじめは知らないことばかりでしたが、タイル張りのセミナーに行ったり、メーカーにしつこく聞いたりして勉強しました。
その甲斐あって、今では建設工事の元請さんや同業者の方にも納得していただける説明ができています。

外壁タイルを接着剤張りにするメリットとデメリット

外壁タイルを接着剤張りにする一番のメリットは「タイルが剥がれにくくなる」事です。
タイルがはがれにくくなれば、剥がれたタイルが歩行者の頭に落ちてケガをさせるリスクも少なくなりますし、経年劣化による修繕費用もかなり抑えられます。
他にも条件付きではありますが、いくつかメリットがあります。

無条件で得られるメリット
  • タイルが剥がれにくくなる。
一定の条件付きで得られるメリット

従来のセメントモルタル張りの時はタイルとセメントモルタルの隙間に雨水が入ると、セメントモルタルに含まれている水酸化カルシウムが溶け出してエフロレッセンスを生じやすかったので、雨水の侵入を防ぐために目地部分にセメントを詰めるのが当たり前でした。

接着剤張りは接着剤の中に水酸化カルシウムが含まれていないので、もし隙間に雨水が侵入してもエフロレッセンスの心配がありません。
ですから、「目地詰めあり」と「目地詰めなし」から選択できるようになりました。

目地詰めなしの施工方法を選べば、タイル張りの副資材を原因としたエフロレッセンスが生じなくなったり、コストダウンに期待できるなどの別のメリットもあります。

外壁タイルを接着剤張りにするデメリットは、従来のセメントモルタル張りよりもコストアップすることです。
これ以外はデメリットらしいものはありません。

外壁タイルを接着剤張りにするデメリット
  • コストアップする。

ただ、先ほども申し上げましたが、目地詰めなしの施工方法を選べばコストアップは大した問題にはなりません。
私がいつも見積もりをしている内容を表にまとめましたので、コストの比較材料にしてください。

工事項目 工事手間単価 タイル単価 副資材単価 合計単価
45二丁掛タイルセメントモルタル張り(目地詰めあり) 2,590円/㎡ 1,550円/㎡ 720円/㎡ 4,860円/㎡
45二丁掛タイル接着剤張り(目地詰めなし) 1,980円/㎡ 1,550円/㎡ 1,630円/㎡ 5,160円/㎡
45二丁掛タイル接着剤張り(目地詰めあり) 2,590円/㎡ 1,550円/㎡ 1,630円/㎡ 5,820円/㎡

Q-CAT認定品として補償を受けるために確認しておかなければならない事

まずはQ-CAT認定品というものがどういったものかについてご説明いたします。
Q-CATはQuality accreditation system for Combination of organic Adhesive exterior Tileの略称で、外壁タイルと有機系接着剤の組み合わせ認定制度という意味になります。

組み合わせ認定されたタイルと接着剤、それから適切な下地に張り付けたのであれば、Q-CAT保険の補償対象になります。
Q-CAT保険の詳細な補償内容は公式サイトでご確認いただいた方が確実ですが、ざっくり言うと補償期間は13年間で、タイル剥落の補修工事に対して最大2000万円までがてん補されます。

この保険は自動付帯になっているので、いちいち説明を受けたり契約書を交わすといったわずらわしい手続きはありませんが、保険の適用を受けるためには絶対的に確認しておかなければならないことがあります。
それはタイルと接着剤の組み合わせごとに発行されているQ-CAT認定証明書です。

Q-CAT認定証明書に明記されているタイルと接着剤を使用するのであれば問題はありません。
問題がでてくるのは、ただのQ-CATマーク付きの商品の組み合わせをしたときです。
例えば、以下の組み合わせのうち、上は良いけど下はダメです(記事執筆時点)。

Q-CATマークが付いていたとしても、組み合わせの認定を受けているかについては工事店やメーカーにきちんと確認をとりましょう。
また、工事完了後には材料の出荷証明書を発行してもらっておきましょう。

接着剤張りと一般的なタイル張りの工法の違い

今の外壁タイル工事では接着剤張りが主流になってきていますが、従来はセメントモルタル張りが一般的な工法でした。
両者の違いは色々ありますが、主な違いは「コスト」「接着性」「追従性」「防水性」「適用下地の範囲」の5つです。

この中で接着剤張りが特に有利なのは「追従性」と「防水性」の2つです。
え?接着性は?と思われるかもしれませんが、実際にタイルの引張試験を行っても、接着性に特別な違いは見られませんでした。
私だけかもしれませんが・・・。

ただ、接着性に大した違いは無くても、長期的な視点で考えると接着性よりも建物の動きに対する追従性の方が重要になってきます。
建物は気温の変化や湿度によって微妙に変形するので、伸縮して剥離しないように対応できる有機系接着剤の方が有利です。

防水性については、有機系接着剤が明らかに有利です。
というのも、有機系接着剤の成分となっている変成シリコーン系やウレタン樹脂系は防水工事でも使われていて、すでに十分な実績があるからです。
タイル張り付け用のセメントモルタルには粉末樹脂が入っていますが、追従性などを考慮すると断然有機系接着剤が有利です。

接着剤の成分で健康被害にあったりしない?

化学物質過敏症とかでなければ、ほぼ大丈夫です。
その根拠は、Q-CAT認定接着剤は全てJIS(日本工業規格)から ホルムアルデヒドの放散量が非常に少ない証明であるF☆☆☆☆(エフフォースター)の認定を受けているからです。

ホルムアルデヒドは建設材料に含まれる化学物質の一つで、シックハウス症候群を引き起こす原因物質とされています。

どうしても心配な方はパッチテストをして、問題が無いか確かめておきましょう。

剥がしたい時に剥がせるの?

これは剥がせます。
タイルは電動ピックで、接着剤はカッターナイフの刃を装着できるスクレーパーなどを使えば、苦労はしますが剥がせます。


外壁タイルを接着剤張りにすれば、タイルが剥がれにくくなります。
タイルが剥がれにくくなるという事は、タイル剥落による歩行者への災害の防止にもなりますし、将来訪れるであろう大規模修繕工事のコスト削減にもつながります。

以上、タイル業界で今流行っている外壁タイルの接着剤張りの良さ、でした~。