外壁コンクリートの目荒らしに適した高圧水洗浄の圧力

「外壁コンクリートの目荒らしをするためには、どれぐらいの圧力で洗わなきゃいけないの?」

2019年8月26日時点 での、外壁コンクリートの目荒らしに適した高圧水洗浄の圧力に明確な決まりはありません。

建築工事をする上での参考書籍として権威のある建築工事標準仕様書の著作者である日本建築学会に確認したところ、以下のような回答をいただきました。

質問いただいた「ある物件のタイル工事仕様書『外壁タイル張り・接着剤張り・目荒らし工法・高圧洗浄』の高圧洗浄の強さ基準」についてですが、JASS19 3.7.2 下地処理に記述があります。解説表 3.17 コンクリート表面の清掃及び目荒らし方法には、超高圧水洗浄法の概要に吐出圧等の記述がありますが、ノズル距離、作業速度の作業条件、及びコンクリート強度等によっても目荒らし程度が異なるため、事前に施工者(建設会社)と専門工事業者との間で協議して管理基準を設定することをお薦めします。

これはつまり、その時の状況次第という事になりそうです。
私見ですが状況確認は以下の通りにやれば問題ないでしょう。

  1. 建築図面の中の建築特記仕様書に記載してある圧力の確認をする。
  2. コンクリートの現場打ちが完了した後に、高圧洗浄を試験的に実施して目荒らしの程度を確認する。
  3. 工事関係者による協議をして最終的に決定する。

それでは、私が関わった実際の案件を元に詳しく解説をします。

状況確認プロセス1:建築図面の中の建築特記仕様書に記載されていた内容の確認

今回の案件では外壁の下地処理がタイル工事の中に含まれており、建築特記仕様書にリストアップされていた内容は「目荒らし工法(高圧水洗処理)」でした。
明確な指示ではありませんでしたが、ひとまず見積もりに含めることにしました。
必要なければ後で除外すればよい、という私の個人的な方針です(笑)。

圧力についてはどこにも明記されていませんでした。
MCR工法もリストアップされていましたが、弊社では取り扱いをしていない型枠工事に関する事なので、スルーしました。

後から分かったことなのですが、高圧水洗浄は圧力に応じて工事単価もかなり変わるので、お見積りを作成する時はもめ事を避けるためにも但し書を添えたほうが無難です。
ちなみに私は50Mpaでお見積もりをして但し書も添えていなかったので、状況次第では苦しい言い訳をして予算を増やしてもらわないといけなくなるなー、と、内心ではかなりヒヤヒヤしていました。

状況確認プロセス2:目荒らしの程度を事前に確認

本来であればコンクリートの現場打ちが完了した後に、その現場で高圧洗浄を試験的に実施して目荒らしの程度を確認しなければ正確な状況確認にはなりませんが、ちょうど消費税増税前だったこともあり、工事契約を早めに交わさなければならない理由などから、今回は違うもので実施しました。
代用したものはコンクリート製の溝蓋です。

コンクリートの配合割合などは全く考えずに、市販されているコンクリート製の溝蓋に対して高圧洗浄のテストを行いました。
そのテストの内容は以下の通りです。

  • ウォータージェット屋さんが使用を予定している業務用の高圧洗浄機で実際に洗浄テストをしてもらう。
  • 洗浄圧力は30Mpa、50Mpa、60Mpaの3段階で比較する。
  • 洗浄の対象は表面がすべすべしたコンクリート製の溝蓋。
  • 高圧水をコンクリート製の溝蓋に対して垂直に当てる。

このテストによって得られた結果がこちらです。

水圧により、強度の弱い場所が弾き飛ばされて、コンクリートの中の砂利が出現しています。
30Mpaに比べて60Mpaは表面に見える砂利の量がかなり多くなっているので、フラットな面を残しつつもかなり凸凹しています。

洗い終わった後のコンクリート表面を触ってみると、30Mpaはすべすべさ80%、ざらざらさ20%でした。
50Mpaはすべすべ50%、ざらざら50%くらいです。
60Mpaはすべすべ30%、ざらざら、というかぼこぼこ70%っていう感じでした。

凸凹しているほど、接着面積が多くなるので接着力が増しますが、あまりに凸凹していると今度はその凸凹を直すための補修作業が必要になります。
高品質な補修ができるのであれば問題ありませんが、費用・時間・接着力を総合的に考えると、一番バランスが良いのはできるだけ補修をしないで済む程度の凸凹です。
タイル工事に携わっている個人的な気持ちとしては、50Mpaぐらいが丁度よい洗浄状態です。

状況確認プロセス3:どのくらいの圧力で洗浄するかについて関係者と協議

事前に圧力ごとの洗浄テストを行った結果をもとに、設計会社・工事管理会社と協議をしました。
最終的な判断を私に委ねていただいたので、水圧は50Mpaに決定しました。

今回の外壁タイル張りの工法は接着剤張りだったこともあり、目荒らしとしては十分なグレードとなりました。
これがもしセメントモルタル張りだった場合、50Mpaではなく150~200Mpaの高圧が必要になったかもしれません。

状況確認プロセス4:プロセス2のやり直しとして念のために高圧洗浄着工時に目荒らしの程度を確認

本来行うべきプロセスをごまかしてしまったので、実際にタイル張りを行う本物のコンクリート外壁面に対して改めて50Mpaで高圧洗浄テストを行いました。
そうすると、コンクリート製の溝蓋の時よりもはっきりとコンクリートの強度の違いが現れてしまいました。

コンクリートがジャンカになったところや増し打ちになったような箇所は、もっとひどい状態になっていました。
50Mpaでこの状態だったので、そのまま圧力を変えずに高圧水洗浄を行いました。

家庭用の高圧洗浄機で代用できないの?

これは条件次第です。
家庭用の高圧洗浄機は水圧が最大でも10Mpa程度なので、高圧水洗浄法に必要な能力としては不足していますが、目荒らしを目的としないただの水洗いで良ければ家庭用の高圧洗浄機の水圧でも十分代用できます。

グラインダーで削った方が安上がりなんじゃないの?

ハッキリ言ってグラインダーで削った方が安上がりです。
但し、コンクリートの脆弱な部分をピンポイントで除去することはできませんし、ホコリまみれになるので安全衛生管理上好ましくありません。
また、グラインダーで削った後は別途水洗浄が必要になり、工事期間が伸びることを覚悟する必要があります。


外壁コンクリートの目荒らしに適した高圧水洗浄の圧力に明確な決まりはないので、その都度テストをしてから関係者で協議・決定をするのがベストです。
少し時間と費用はかかりますが、後で責任問題になった時に施工会社を守る盾となるでしょう。

以上、外壁コンクリートの目荒らしに適した高圧水洗浄の圧力、でした~。