「在留資格【技術・人文知識・国際業務】の外国人を建設作業員として受け入れる方法はないの?」
ありません。
在留資格【技術・人文知識・国際業務(以下、技人国と省略します。)】に関して、単純な肉体労働を主とした建設作業を法務省が良しとすることはないのでビザがおりません。
建設作業員として受け入れたいのであれば【技能実習】か【特定技能】の在留資格で申請可能な人を選ぶようにしましょう。
建設作業員ではなく施工管理の場合でも、主に下請け負いをしているのであれば技人国の取得は難しいでしょう。
建設業は5次請け6次請け当たり前、中抜きパワハラ低賃金など、実際にはそうでないとしても良くないイメージが付いてしまっているので、世間体を考えた時に法務省が許認可を渋るというのは仕方がありません。
建設業であっても設計しかしない、とかなら技人国を認められるかもしれません。
主な労働内容が頭脳労働であれば研修程度の肉体労働は可能でしょうが、主に肉体労働の建設労働者として技人国の取得を目指すのは無理無理の無理です。
目次
在留資格【技人国】を取得できる人と受け入れ企業のおおまかな条件
技人国を取得できる人と受け入れ企業の大まかな条件は下記の通りです。
-
- 大卒
- 大学の学部と就業先の業務内容に関連性がある事
- 主に頭脳労働である事
これらの他にも給与が他の日本人と同水準だとか、受け入れ企業の経営状態が安定しているだとか色々あります。
詳細な条件につきましては法務省のホームページに記載されています。
技人国の受け入れ可能人数
技人国の在留資格を取得した外国人を受け入れるにあたり、受け入れ可能人数に制限は設けられていません。
とは言え、日本人が1人もいないのに技人国の人が100人もいるような状態を法務省が認めるわけもありません。
大雑把な目安としては、技人国の人を合わせた従業員のうち、日本人が3分の1以上はいないと受け入れは難しいでしょう。
建設作業員としての労働が認められている特定技能の場合は日本人従業員の数と同数が受け入れ可能上限となっているので、技人国の方が有利であることは間違いありません。
私がこれまでに関わった在留資格の比較と建設業へのおススメ度
私がこれまでに関わった就労可能な在留資格のおおまかな内容は下記の通りです。
在留資格名 | 最長在留期間 | 建設作業の就労 | 工事屋へのおススメ度 |
---|---|---|---|
高度専門職1号 | 無期限 | 不可 | ☆☆☆☆☆ |
高度専門職2号 | 無期限 | 不可 | ☆☆☆☆☆ |
技術・人文知識・国際業務 | 無期限 | 不可 | ☆☆☆☆☆ |
技能実習1号 | 1年 | 可 | ★★★☆☆ |
技能実習2号 | 2年 | 可 | ★★★☆☆ |
技能実習3号 | 2年 | 可 | ★★★☆☆ |
特定技能1号 | 5年 | 可 | ★★★★☆ |
特定技能2号 | 無期限 | 可 | ★★★★★ |
特定活動 | 無期限 | 可 | ★★☆☆☆ |
高度専門職は技人国よりも永住権を取得しやすい在留資格です。
永住権を取得できれば在留資格が永住者となり、在留期間は無期限となります。
留学生で日本での就労を希望されている方の多くは、できればこの在留資格を取得したいのではないでしょうか。
ただ、高度専門職を取得するための条件はかなり厳しいので、取得したくてもできないことの方が多いです。
私が以前高度専門職で迎え入れた中国人のかたがいるのですが、そのかたは私が勤める会社のグループ会社で主に通訳として活躍されています。
昨今、建設業ではとにかく資格資格みたいなところがあるので高度専門職を取得できるような頭使う系の能力が高い人に来てもらえると非常に助かるのですが、建設作業員としての就労は認められていないのでおススメできません。
技人国は高度専門職に比べると取得条件は厳しくありませんが、だからと言って能力が劣っているという訳ではありません。
ただ、高度専門職と同じく建設作業員としての就労は認められていないので全くおススメしません。
技能実習は建前上、技能を習得するために日本の企業に生徒として働きに来て、在留期間満了後にその技能を母国で活かすという事になっていますが、実際には日本企業が不足している労働力を補うために迎え入れています。
このような建前と実際の運用が乖離している技能実習制度ですが、2023年12月3日時点では制度の見直しや廃止が検討されています。
今のところ技能実習制度は継続していて、建設作業員としての労働も認められています。
ただ、習得する技能の職種によって仕事の内容が限定されるので、複合的な仕事をしている企業ではとても使いにくいです。
例えば、タイル張り作業で登録していると塗装作業をさせることはできません。
どうしても登録作業と異なる作業をさせたい場合は、外国人技能実習機構に申請して受理される必要があります。
受理された場合でも主作業としては認められず、ちょっとしたお手伝い程度の作業時間しか許されません。
複合的な仕事ではなく1職種の作業だけを行わせる予定なら、技能実習はおススメです。
特定技能1号は2023年9月から取得しやすい在留資格となりました。
これまでは特定技能1号を取得できる資格の試験を受検できる機会が少なかった上に海外での試験会場がなかったので、特定技能1号を取得するには技能実習から上がっていくのが一般的でした。
今では毎月数回、日本のどこかで特定技能1号評価試験が開催されており、海外でも順次開催されています。
特定技能1号評価試験は頭使う系の試験なので、技能がなくても一定の日本語力があれば合格も難しくはありません。
もちろん、従来の技能試験の実技と学科に合格することで特定技能1号を取得することができますし、技能実習を3年以上継続することでエスカレーター式に特定技能1号になることもできます。
技能実習では認められている仕事の範囲が職種レベルでしたが、特定技能で認められている仕事の範囲は業種レベルなので、かなり広範囲の仕事をさせることができます。
特定技能2号になれば在留期間が無制限にもなりますし家族の帯同も許されるので、本人たちが日本で長期的に働きたい場合は、高度専門職や技人国と比べても見劣りしない資格です。
建設作業をしてもらう上で仕事の範囲の制限が一番少ない特定技能は在留資格の中で最もオススメです。
特定活動につきましては従事させても良い業務の範囲に制限がないのでとても魅力的ではありますが、特別な理由がなければ取得することができない在留資格なので、その理由がなくなると残りの在留期間が数か月~1年以内程度となります。
ですから、もし特定活動を取得していたとしても母国への帰国が可能になれば、あっという間に在留期限を迎えることになるので注意が必要です。
海外の給与事情
日本に来ている外国人本人に聞いた情報をもとに海外の給与事情を表にしました。
ネットで検索して出てくる平均給与とはかなり異なっています。
国名 | 1か月あたりの給与 |
---|---|
フィリピン | 2万円 |
ベトナム | 8万円 |
インドネシア | 5万円 |
フィリピン人の多くは会社勤めではなく、おそらく個人事業主が多いのでしょう。
聞くところによると、個人事業主は毎日仕事があるわけではなく、1週間のうちに2~3日仕事をしているような感じだそうです。
ですから毎日仕事がある人は1か月あたり4万円くらい稼ぐのかもしれません。
フィリピンの公務員は1か月あたり10万円以上の給与があるそうです。
凄い給与格差ですね。
ベトナムでは1か月あたり8万円くらいもらえるそうです。
8万円あれば特に不自由なく暮らせるそうです。
インドネシアでは1か月あたり5万円くらいもらえるそうです。
給与が良い人は7万円くらいだそうです。
余談ですが、インドネシアでは自動車運転免許を取得するために5万円ほど必要で、技能検定や学科検定などは日本と同じように別途費用が掛かります。だから、という訳ではありませんが、インドネシアで自動車運転免許を取得している方は日本に来た時に免許の切り替えをすることが可能です。
技人国の取得が可能なインドネシア人の面接に参加した時の感想
今回、私が勤める会社のグループ会社で、工場内の機械オペレーターとしてインドネシア人を面接するという話があったので参加してきました。
面接はWEB面接で、面接希望者は5名、採用予定人数は2名でした。
面接希望者の全員が働く意欲が高く、素晴らしい人材ばかりだと感じました。
技人国を取得できるレベルの人が特定技能や技能実習を取得して作業をしてくれれば品質や安全も格段に向上するだろうなーと思いましたが、そんなレベルの人は中々作業することを選ばないでしょうから夢物語ですね。
さて、話は戻って、どなたもインドネシアの工業系の大学を卒業されていて、以前に技人国のビザで日本で働かれていた経験がありました。
ですから、日本語での会話は全員問題ありません。
インドネシアの人は母国語がインドネシア語で、フィリピンのタガログ語と似たような発音でした。
よくよく聞いてみると、インドネシア語とタガログ語は同じ発音で同じ意味の言葉は多いそうで、言葉の全部はわからなくても部分的には分かるとのことでした。
マレーシア語とインドネシア語は発音も意味もほとんど同じだそうです。
面接希望者1人ずつに確認はしていませんが、インドネシアの大学を卒業しているのであれば英語は問題なく話せるようでした。
5名のうち3名は日本に永住希望で、2名は20年後ぐらいを目途に帰国希望でした。
私はWEB面接をしている場所から少し離れたところで会話だけを聞いていましたが、採用する側の気持ちはなんとなく察しました。
主な判断基準は「日本語力」「長期労働意欲」「挙動」「体格」「年齢」だったと思います。
最終的にシュッとした好青年とガッチリした体格の青年に採用通知を出していました。
面接⇒即採用の是非を知らせていたので、不採用者に変に期待を持たせるよりも良かったと思います。
2023年11月28日時点で、ビザ申請から入国許可が出るまで2~3か月かかるそうです。
コロナ禍が明けて外国人の日本入国申請がかなり増えているそうなので、外国人人材が必要な場合は早めに行動したほうが良さそうです。
余談②です。インドネシア人は日本人のように苗字や下の名前はありません。ですから、親子関係を名前から連想することはできません。
はい、という事で在留資格【技術・人文知識・国際業務】の外国人を建設作業員として受け入れる方法はありません。
技人国は日本の派遣社員と同じ位置づけのようで、建設現場で作業させることは認められていません。
建設作業員として迎え入れたいのであれば技能実習か特定技能に絞り込みましょう。
ただ、海外の若者たちもできれば建設現場で働きたくないそうなので、今後は受入が難しくなっていくのではないでしょうか。
以上「在留資格【技人国】の外国人を建設作業員として受け入れるのは無理」でした。