技能実習生を適法適切に解雇する方法

「技能実習生を解雇したいんだけど、違法にならない解雇ってどうしたら良いの?」

受け入れ企業が倒産等により技能実習の継続が不可能となった場合は、社会通念上相当と認められる場合に該当するので技能実習生を適法適切に解雇することが可能です。
それ以外の場合は、現在の日本においては法令に接触する可能性が非常に高いので、ノーリスクで解雇できるとは考えないほうが良いでしょう。

少し脱線しますが、海外では解雇が簡単だという話を耳にしたことがある人は、その反対に日本では解雇が難しいという話も耳にしたことがあると思います。
経営者側であれば海外的な考え方に賛同する人が多く、労働者側からすれば日本的な考え方の賛同者が多くなるはずです。

ほとんどの企業に共通している営業目的はお金を稼ぐことなので、経営が厳しいときは固定費を減らすために切りやすい労働者を解雇したいというのは当然のことで理解できます。
一方で、企業の経営が厳しいからと言って簡単に「はいそうですか」と解雇を承服できないという労働者側の気持ちも理解できます。

このように、解雇に関してはどちらが良くてどちらが悪いと結論付けられるものではありません。
どちらも間違ってはいないですし、どちらも正しいと言えるものではありません。

とは言え、どこかで線引きをしなければ解決につながらない問題でもあります。
ここでは、法令と照らし合わせながら技能実習生の解雇について考察していきます。

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技能実習生を適法適切に解雇するには?

まずは技能実習生の解雇に関する法令の解釈について考えていきましょう。
関係法令は労働契約法で、第16条と第17条に解雇についての記載があります。

第三章 労働契約の継続及び終了

(解雇)
第十六条 解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。

第四章 期間の定めのある労働契約

(契約期間中の解雇等)
第十七条 使用者は、期間の定めのある労働契約(以下この章において「有期労働契約」という。)について、やむを得ない事由がある場合でなければ、その契約期間が満了するまでの間において、労働者を解雇することができない。
2 使用者は、有期労働契約について、その有期労働契約により労働者を使用する目的に照らして、必要以上に短い期間を定めることにより、その有期労働契約を反復して更新することのないよう配慮しなければならない。

技能実習生の場合は在留資格が段階的に上がっていき、最終的には技能実習3号という在留資格になります。
技能実習1号のときは在留期間が1年、それが終わって技能実習2号になれれば在留期間が2年、さらにそれが終わって技能実習3号になれれば在留期間が2年というような区切り方です。

従いまして、技能実習生は期間の定めのある労働契約に該当します。
契約期間中の解雇等について記されている第17条に「使用者は、期間の定めのある労働契約(以下この章において「有期労働契約」という。)について、やむを得ない事由がある場合でなければ、その契約期間が満了するまでの間において、労働者を解雇することができない。」とあります。

これは裏を返せば、やむを得ない事由があれば解雇できるということになります。
やむを得ない事由の例としては以下のようなものがあります。

契約期間中の解雇等におけるやむを得ない事由の例
  • 労働者が就労不能になった
  • 労働者に重大な非行・違法行為があった
  • 雇用の継続が困難になるような経営難に陥った

ただ、これらに程度というものが加わってくるので、実際にどの程度であればやむを得ない事由になるのかについては法律家に確認するしかありません。

もし、不当解雇ということで裁判になってしまった場合は、裁判所のジャッジにゆだねる事となります。
裁判所はやむを得ない事由の存在を容易には認めない傾向があるので、裁判になった場合は経営者側が不利です。

実際のところ、技能実習生の場合は期間の定めのある労働契約なので裁判沙汰になるようなことはほとんどないでしょう。
なぜなら、雇用契約できる期間が技能実習1号なら1年、技能実習2号と3号なら2年なので、雇用契約満了まで耐えれば何の問題もなく雇いやめをすることができるからです。

雇用期間満了を待たずして解雇する場合に注意すべきポイントは?

解雇に至るやむを得ない事由が技能実習生側にあるのか企業側にあるのかで注意すべきポイントが異なります。

解雇に至るやむを得ない事由が技能実習生側にある場合の注意すべきポイント
  • ケガや病気の場合は医師の診断書を取得しておく。
  • 非行・違法行為があった場合は具体的な内容と指導内容についての記録を動画・写真・書面で取っておく。
  • 技能実習生に問題があった場合はその都度対応して、その都度記録を残す。
解雇に至るやむを得ない事由が企業側にある場合の注意すべきポイント
  • 企業が雇用している日本人従業員も解雇するぐらいの事案であるかどうか確認する。
  • 解雇した技能実習生を新たに受入れてくれる企業を事前に見つけておく。
  • 30日前までに解雇予告をするか、無理な場合は法令に則って解雇予告手当を支給する。

技能実習生がケガや病気をして技能実習を続けることが困難になった場合は仕方がありませんが、勤務態度が悪いとか、誰かのものを盗むとか、密漁するとかいうような人格に関わることは、その都度記録が必要になります。

例えば1回遅刻しただけでは解雇なんてできるわけもありませんが、100回遅刻したということになれば話は別です。
LINE、Facebookメッセージ、口頭注意、何でも良いですが、それを証明するものがなければ立証できないので、やはり記録は必要なのです。

解雇に至るやむを得ない事由が企業側にある場合の原因のほとんどが経済情勢の悪化によるものです。
それを証明するものは当然必要ですが、どこかからお金を借りるにしても経営再建を図るための計画書が必要になります。

固定費削減の筆頭候補は技能実習生になるかもしれませんが、あくまでも日本人と同列に扱わなければならないので日本人の解雇も計画に盛り込んでおく必要があります。

また、技能実習生は一般的な日本人と同じように自由に職業を選べる権利を与えられていないので、解雇後の技能実習生の新たな受け入れ先企業を見つけておかなければなりません。
技能実習生の従事させる業務を変更することはできないので、ニッチな業種であればあるほど受け入れ先が見つかりにくい点に注意が必要です。

実際に解雇する場合、解雇予定日の30日前までに解雇予告をしておけば手当を支給する必要はありませんが、解雇予告が30日未満になる場合は法令に則って解雇予告手当を支給する必要があります。
もし解雇予定日の1日前に解雇予告をした場合は、約1か月分の給与に値する額を解雇予告手当として上乗せして支払うことになります。

技能実習生を解雇した場合の企業側のペナルティって何があるの?

正当な手順を踏んだ解雇であれば何のペナルティもありません。
ここで言う正当な手順を踏んだ解雇とは、解雇理由が事業主の一方的な都合ではない事、解雇する技能実習生の受け入れ先を見つけている事、解雇予告をする若しくは解雇予告手当を支払うなどの法令にのっとった解雇をする事、です。

不当解雇の場合は言うまでもなくペナルティが与えられます。
受け入れ企業認定の取り消しは当然のこととして、行政から指導が入るでしょうし協同組合員の場合は協同組合から厳しい指導が入ります。
法的なペナルティ以外にもメディアからのつるし上げもあるでしょうし、無関係な個人にも攻撃が及んでしまう恐れがあります。

解雇された技能実習生はどうなるの?

新たな受け入れ先の企業で活動することになります。
業種は解雇された企業と同じ業種です。
技能実習生は初めに登録された技能実習の業種から変更することができないので、異業種で受け入れられることはありません。


はい、ということで、技能実習生を法令にのっとって解雇をしたい場合は、以下の事にご注意ください。

  • 解雇理由が社会通念上相当であること
  • 企業が雇用している日本人従業員も解雇するぐらいの事案であること
  • 解雇予定の技能実習生を新たに受入れてくれる企業を事前に見つけておくこと
  • 30日前までに解雇予告をするか、無理な場合は法令に則って解雇予告手当を支給すること

以上「技能実習生を適法適切に解雇する方法」でした。