「タイル張り技能検定随時3級のテストってどんな内容なの?」
タイル張りの実技試験だけです。
学科試験はありません。
実技試験は仕事で真面目にタイル張りをしている者であれば、多少センスが無くても合格できる程度の内容です。
もし、タイル張りに自信が無くても、ポイントを押さえて数日練習をすれば合格ラインに届きます。
それではタイル張り技能検定随時3級の実技試験内容について詳しく解説していきます。
目次
課題
タイル張り技能検定随時3級では以下のような課題が出題されます。
壁タイル張りと床のタイル張りです。
地域や年度によっては異なるかもしれませんので、正しくは試験を実施している団体にお問い合わせください。
さて、この課題をクリアするためのポイントは以下の通りです。
- タイル張り技能検定随時3級の実技試験の課題をクリアするためのポイント
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- 私語をしない。
- 使用が認められている道具だけで完成させる。
- 制限時間内に終わらせる。
- 課題通りの寸法に収める。
1番目の「私語をしない。」につきましては、3年目の技能実習生であれば日本の同調圧力文化を理解ある程度できているはずなので特に問題になることは無いでしょうが、念のためきちんと言い聞かせてください。
彼らに悪気は無くても試験官によっては厳しく採点されてしまうので、こんなつまらない事で減点されるのは絶対に避けましょう。
2番目の「使用が認められている道具だけで完成させる。」につきましては、認められている道具のほとんどが旧式なので、普段レーザー墨出し器や電動ディスクグラインダーを使い慣れている技能実習生の場合は少し厄介かもしれません。
しかし基本的なやり方さえわかれば何も難しい事はありません。
こちらにつきましては後述します。
3番目の「制限時間内に終わらせる。」につきましては、1度も失敗せずにテキパキと完成させることが出来れば30分ぐらいの時間が余るはずなので、「失敗しない」「テキパキこなす」のレベルを高めておけば問題にはなりません。
私が考えた実技試験対策用のテキパキ作業方法を後述していますので、よろしければご活用ください。
4番目の「課題通りの寸法に収める。」につきましては、私が試験官と一緒に採点をした経験があるので、その時の採点基準を思い出しながら解説します。
使用が認められている道具はこれだけあれば十分
まずは実技試験の問題用紙に記載されている「使用工具等受検者が準備するもの」をご確認ください。
実技試験の問題用紙自体につきましては転載複製が禁止されているので、引用が認められているであろう範囲内で表にしました。
中央職業能力開発協会
使用工具等受検者が準備するもの 品名 寸法または規格 数量 備考 さしがね 1 金属製直尺 1m 鋼製巻尺(スケール)でもよい 墨つぼ 1 墨さし 1 下げ振り 1 水盛り管 1 水平を見るもので、気泡式の水準器でもよい タイルごて 1 れんがごてでもよい 中首ごて 1 木ごて 1 くしごて 1 元首ごて(四半ごて) 1 目地ごて 適宜 こて板 1 金づち 大金づち(大とん) 1 タイルカッタ 1 電動式でないもの タイル切り台 1 モザイク切り 1 金剛といし 1 タイル用きり 適宜 水糸 適宜 ブラシ 1 とろおけ 約20L入り 1 とろぶねでもよい バケツ 約15L入り 2 のこぎり 1 定木切断用 水ひしゃく 1 手ぐわ 1 ちりぼうき 1 養生テープ 適宜 清掃用具 一式 荒神ぼうき、スポンジ、ウエス等 作業服等 一式 保護帽を含む 筆記用具 一式 飲み物 必要量 熱中症対策水分補給用
上記を受け、私が考えたこれだけあれば十分な道具は以下の通りです。
- タイル張り技能検定随時3級の実技試験においてこれだけあれば十分な道具
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- さしがね*1
- スケール(メジャー)*1
- 墨つぼ*1
- 下げ振り*1
- 水準器(水平器)*1
- れんがごて*1
- ●中首ごて(中塗りごて)*1
- 木ごて*1
- ●くしごて*1
- 元首ごて(四半ごて)*1
- こて板*1
- ●金づち*1
- ●タイルカッタ―(電動式ではないもの)*1
- ●タイル切り台*1
- ●モザイク切り*1
- ●金剛といし*1
- ●ブラシ*1
- ●とろおけ(とろぶね)*1
- バケツ*2
- のこぎり*1
- 水ひしゃく*1
- 手ぐわ*1
- ●養生テープ(塗装用マスキングテープ9mm幅)*18m
- 清掃用具(スポンジ、ウエス(クロス))*各1
- 作業服(作業服上下、保護帽、作業靴)*各1
- ●筆記用具(油性マーカー、鉛筆またはシャーペン(メカニカルペンシル))*各1
- 飲み物*1
ここに挙げている道具の呼称は国・地域・年代で呼び方が違うかもしれません。
例えば私の場合はモザイク切りの事をタイルペンチと呼びますし、とろおけはプラ舟と呼びます。
間違えやすそうなものには名称の前に丸印(●)をつけています。
念のため、間違えやすそうなものをまとめた画像を作ったのでご確認ください。
これらの他に、道具を洗う用のブラシも忘れずに準備しておきましょう。
実技試験の問題用紙には金づち=大金づち(大とん)と記載されていましたが、タイル屋さんが通常使っている一般的な金づちでも問題ありませんでした。
タイル切り台がない場合は300mm角程度のベニヤ板でも代用できます。
マスキングテープは壁のタイル墨の上に張り付けるのが目的です。
この手法は九州地方に多く見られます。
普段マスキングテープを使わないかたは無理に使う必要はありません。
油性ペンは陶器質タイルの表面に記を付けるのが目的です。
細目が良いです。
シャーペンは墨さしの代わりに使います。
芯の太さは9mmが使いやすいのでオススメです。
制限時間内に終わらせるためのテキパキ作業方法
制限時間は2時間です。
練習や準備をせずに2時間以内に完璧に終わらせるのは、どんなに上手な人でも難しいです。
ですから準備万端にして本番に挑みましょう。
それではまず初めに試験のざっくりした流れを覚えてください。
- 試験の流れ
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- 材料に不備はないか確認をする。
- 道具に不備はないか確認をする。
- ここからスタート
- 試験用下地の壁面に墨出しをする。
- 試験用下地の床面に墨出しをする。
- 壁面に張り付けるタイルを全てカットする。
- 壁面にタイルを張り付ける。
- パサパサモルタルを練る。
- 床面にパサパサモルタル下地を作る。
- パサパサモルタル下地の表面にノロペーストを流して床タイルを張り付ける。
- 見栄えが良いように課題を綺麗にする。
- ここで終了
- 後片付け
試験会場には長さ900mmの刃定木が2本と試験用下地が準備されています。
と言っても、ほとんどの場合は優良認定事業者になるための点数稼ぎを兼ねて自社で準備をするはずです。
何にしても刃定木については自社で準備をした方が都合が良いです。
さて、「1」「2」「3」についての詳しい説明は不要ですね。
不備があると試験を受けることができなくなるのでご注意ください。
「4」については以下のような墨出しをするとタイルを張りやすいのでオススメです。
はじめに①のような垂直の墨を下げ振りを使って出します。
次にさしがねを使って②を出します。
あとは①②を基準にしてそれぞれの墨出しをしましょう。
「5」についてはパサパサモルタル下地のための墨出しをしておきましょう。
以下のような墨出しをすると作業能率が上がります。
「6」については完全に対角にカットしてしまうと張り付けた後で調整できなくなるので、0.5mm小さめになるようにカットした断面を金剛砥石で削りましょう。
「7」に取り掛かる前に壁面の墨の上にマスキングテープを張っておきましょう。
そうすることで、接着剤を塗った後でもマスキングテープを剥がせばタイル張りの基準となる墨がくっきりと現れます。
「7」で塗布する接着剤は中塗りごてで満遍なく塗り付けて、5mmのくしごてで均一にくし目を付けましょう。
採点の時に接着剤の充填率を確認されるので、塗り残しや塗布不足が無いように注意してください。
接着剤のタイプⅡは硬化が早いので、タイルを張り付けて30分もすれば全く動かなくなります。
壁タイルの寸法的な調整はこの時点で終わらせておきましょう。
「8」のパサパサモルタルを練る時は軟らかくなりすぎないように慎重に撹拌してください。
軟らかくなりすぎたらセメントと砂を加えて硬さを調整してください。
全く焦る必要はないので、水を加える量を1回あたり100mlずつにしておきましょう。
この作業に少しぐらい時間がかかっても仕方がありません。
それほど硬さの調整に時間がかかる作業です。
技能実習生の練る技量によっては一番練習すべき項目かもしれません。
「8」では刃定木を枠代わりにしてパサパサモルタルに圧力をかけながら敷き込みます。
刃定木のカット寸法は以下を参考にしてください。
刃定木の端を定木幅に合わせてカットしておくと、パサパサモルタル下地を22mm厚で定木ズリしやすくなります。
刃定木の幅は地域やメーカーによって異なることもあるので、幅が36mm以外の場合は14mmの箇所を適宜変更してください。
刃定木を自社で準備する場合は、カットの時間が省略されるので非常に有利になります。
この有利性を活かしてください。
「9」でノロペーストを流し込んだ後は均一に広げてください。
ここでも採点の時に接着剤の充填率を確認されるので、塗り残しや塗布不足が無いように注意してください。
パサパサモルタル下地の上に張り付けた垂れ付き段鼻タイルは傾きやすいので、叩きすぎや触りすぎにご注意ください。
軽く叩いてノロペーストに密着させられるくらいになれば手間もかからなくて丁度良いです。
最後に目地からはみ出た接着剤やセメントを慎重に取り除き、スポンジで軽くふき取って見栄えを良くしましょう。
片付け作業は試験時間には含まれないので、仕上がりを優先してください。
あれこれ考えながら作業をすると時間はすぐに経過してしまいます。
まずは作業の流れを覚えて、出来れば寸法的なものも頭に入れて、実際の試験の時にテキパキと動けるようにしっかりと練習しておきましょう。
課題通りの寸法に収めるために押さえておくべきポイント
実技試験の採点基準は「課題の寸法通りになっているかどうか」と言うのがほとんどを占めています。
ですから、採点時には課題通りの寸法に収められていることが最も評価されます。
それでは改めて課題通りの寸法に収めるために押さえておくべきポイントを見ていきましょう。
寸法とは関係の無い事も書いていますが、そこはあまり気にせずにご覧ください。
- 採点基準(押さえておくべきポイント)
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- 制限時間内に終わっている事。
- 余計な私語や行動が無かったこと。
- 試験用下地が水平な場所に設置されている事。
- 試験用下地の壁面に反りがない事。
- 床面から壁タイルの上端までの寸法が課題通りである事。
- 壁タイルの右端と左端の寸法が課題通りである事。
- 壁タイルの対角線が課題通りである事。
- カットした壁タイルの縦横の幅が課題通りである事。
- カットした壁タイルの対角線が課題通りである事。
- 壁タイルが下地と同じようにフラットに張られている事。
- 試験用下地の床面に反りがない事。
- 垂れ付き段鼻が壁と平行に張られている事。
- 壁から垂れ付き段鼻の端までの寸法が課題通りである事。
- 床タイルの右端と左端の寸法が課題通りである事。
- 床タイルの対角線が課題通りである事。
- 壁タイルが下地と同じようにフラットに張られている事。
- パサパサモルタル下地の厚さが課題通りである事。
- 壁タイルの接着剤充填率が十分である事。
- 床タイルの接着剤充填率が十分である事。
「1」「2」「3」は飛ばして「4」について、弊社では試験用下地をベニヤ板で作ったのですが、湿気と乾燥でかなり反りが出ていました。
ですがここに関しては、自然な事で仕方がない、という事で減点とはなりませんでした。
他はほとんどが寸法的な採点となります。
寸法の評価は±0mmが最も評価が高く、1mmズレるごとに評価が下がっていき、3mm以上ズレると最悪の評価になります。
最後に特定の場所からピックアップしたタイル張り付け材の充填率を確認して採点終了です。
試験時間内にどれだけ早く終わっても加点はありません。
タイルの表面が多少汚れていても採点には影響しないので、寸法的な調整に時間をかけましょう。
試験結果っていつ頃わかるの?
合格証書の日付は試験日の次の日になっていたので、早ければ試験日から1日や2日で連絡が入ると思います。
弊社の場合は1週間後に合格通知の連絡が入りました。
合格証書は試験日から約2週間後に届きました。
随時3級の技能検定に合格しなかった時はどうしたら良いの?
すみやかに再受検の手続きをしてください。
監理団体を通して技能実習生を受け入れている場合は、監理団体から再受検手続きの打診があるはずです。
尚、技能実習期間中の再受検は1回までしか受けられません。
再受検で不合格すると終わりです。
そうなると技能実習3号に移行できなくなるので、できれば1発合格、できなくても必ず2発目で合格できるようにしっかりと対策しておきましょう。
はい、という事でタイル張り技能検定随時3級のテストで出題されるのは実技試験だけです。
学科試験はありません。
練習期間を設けてしっかりと準備をしておけば、比較的簡単に合格ラインを越えられます。
自信がない時は練習あるのみです。
以上、「技能実習生が3年目に受けたタイル張り技能検定随時3級のテスト内容」でした。